17のチェックポイント徹底検証その1
2009年2月11日

公益総研 非営利法人総合研究所
主席研究員兼CEO 福島 達也

 

今回の公益認定申請においては、事業の特性に応じた(1)〜(17)の事業区分ごとに、公益目的事業のチェックポイントを内閣府はガイドラインの中に掲げている。

しかし、(1)〜(17) の例は、法人の行う多種多様な事業の中から典型的な事業について整理したものであるとのことだが、どうしてもこうやって掲げられていると、そこに該当しないような事業は公益目的事業にならないような気がしてならない。

もちろん、それ以外の場合ということで、18番目も挙げられているが、多くの団体はまず、自分たちの活動がどこに該当するのか、どうしても気になってしまうことだろう。そして、17個の中にぴったりの事業名がないとわかると、がっかりしているのではないだろうか。逆にぴったりの事業名があっても安心できないのだが・・・。

ただ、今回の例はあくまでも典型的な例ということであり、該当しないからと言ってあきらめる必要はないし、むしろ、該当する団体の方が厄介だ。

なぜなら、該当する場合は、そこに書いてあるチェックポイント通りにやっていないと、まず認定を得ることは難しいからだ。

ということで、やはり無視できないので、今回から少しずつ公益目的事業とはいったいどういう事業なのか、検証してみたいと思う。



まず、7番目の「技術開発・研究開発」について考えてみよう。

ここでいう、「技術開発・研究開発」と、次に掲げる「調査・資料収集」はとても似ている事業だが、内閣府の説明だと、知的財産権を生ずるものについては、委託先に利益が生ずるという性格のものなので、事業区分上は、「技術開発・研究開発」としており、知的財産権が生ずる可能性のないものを「調査・資料収集」と便宜上区分しているようだ。

つまり、知的財産の有無でどちらかを選択することになり、いくら自分たちが技術開発だと思っていても、知的財産権が生じなければダメだというのである。

もちろん、成果次第では結果として知的財産権を生じないということもあり得るが、知的財産権を生む可能性があるものならば「技術開発・研究開発」としてチェックしてもよいことになっている。



「技術開発・研究開発」の一般的な事業内容は、あるテーマを定めて、法人内外の資源を活用して、技術などの開発を行う事業ということで、成果については、特許出願などの知的財産権取得のための手続を行うことや、学会や専門誌などで論文を発表するのが一般的だと書いてある。

ここで注意したいのは、学会誌は本来、団体内部の機関誌的要素が強く、会員を中心に配られるのだから、まさしく共益事業だと思っている人も多いのだが、通常考えられる「普及啓発」や「学術集会」の方のチェックポイントではなく、ここのチェックポイントを活用すれば、学会誌も専門誌も公益目的事業になる可能性が高いということだ。

これは、学会や専門団体にとって朗報だろう。

ただし、中にはほとんど公表しないというものや、インセンティブを付与する目的で、知的財産権を受託者に帰属させる契約を受託者との間で締結する外部委託方式もあるが、その場合は、公表や活用をされて初めて不特定多数の者の利益の増進に寄与するということになり、公表されなかったり、活用されなかったりしたら、ただの自己満足事業だからダメだというのである。何とも厳しい。

さらに、いくら、活用されたとしても、それが特定の者に利益に誘導されるようだと、それもダメらしい。ある特定の企業が独占して製品として活用するということになると、その辺りに抵触することになるだろう。



また、「技術開発・研究開発」の場合、法人自らの力でやり遂げることはほとんどないであろうから、外部の資源を活用する場合は、丸投げとみられない工夫が必要だ。つまり、法人が責任を持って事業を行っているシステムになっていなければならないのだ。

特に、事業の入り口(計画)と出口(チェック)は法人がきっちりと管理するべきである。

なお、この事業の事実認定に当たって留意すべき点としては、まず公開性ということが挙げられる。「技術開発・研究開発」の名称や成果を公表していなかったり、その内容について外部からの問い合わせに答えていなかったりというようなことがあれば、どんなに立派な研究であっても、それは不特定多数の者の利益の増進になっていないことになるのだ。だから、特許や著作権の関係もあるが、できるだけ名称や成果の概要は、高らかに公開すべきであろう。

さらに、外部に「技術開発・研究開発」を委託する場合、委託先の選定についても、公正中立的な選定をしているかが決め手となる。どこかの検定団体のように、ファミリー企業に委託していたら、もちろん公益と主張することはできないだろう。

まあ、例の検定団体も今回の件で公益財団はあきらめるのだろうが、むしろ一般財団に行ってしまったら、行政庁という凧の糸が切れるので、どんなやり方でやっても、何の法律でも制限できなくなってしまうだろうから、それもどうなのだろうか・・・。一般法人であれば、公益と違うので、今回のようにマスコミに登場することもなくなるのであろうか。そうなると、あまり公開されたくないような公益法人は、こぞって一般法人に移行するような気がする。



そうそう、今回の問題で、資格認定や検定事業そのものが、果たして非課税でよいのだろうかというところに発展しているらしい。検定は儲かるというニュースに世間が関心を寄せ始めると、税法上の収益事業になる可能性があるらしい。そうなると、多くの資格検定団体が迷惑することになるだろう。まったく、変なところに飛び火しそうで目が離せなくなった・・・。



話がそれたが、委託先は今後重要なキーポイントだ。そのため、委託先を選定するための専門の委員会を設置するなどの工夫が求められる。または相見積もりの資料を公表したり、事業のすべてを丸投げしないよう、監督担当を置くことなども対策として考えられるが、肝心なことは、実質的に説明可能なプロセスが存在し、それを公表することだろう。



また、不特定多数の者の利益の増進を、法人が意識して事業を設計してかどうかも重要だ。特定の企業等のためだけを意図していないことをきちんと位置付け、その収支や目的をホームページなど、適当な方法で明らかにする必要もあるだろう。

さらに、この事業に専門家が適切に関与していることも重要なポイントである。その法人の専門の職員が常駐し、その事業をすべて担当していれば全く問題ないのだが、専門職員がいなくても、専門家がこの事業遂行の過程の中で必ず関与していなければならない。その辺りの人材については相当つっこまれるだろう。

つまり、全く専門家が関与せず、委託先にすべて「丸投げ」ということになると、この事業の公益性が認定されることはまず0%ということになる。

もっとも、ここに関しては、公益認定法第5条第2号の技術的能力のところでもチェックを受けることになるだろうが。

要するに、いわゆる「技術開発・研究開発」のような事業を法人が何もしないで丸投げをし、そのくせ管理費とか人件費などを出して、利ざやだけ稼いでいるようなものは、公益法人の資格がないということなのだ。

さらに、これは一般企業でも時々悪い事例としてあるのだが、丸投げでやって、利益は取らないという方法も認められていない。これは、丸投げでやると事業費が膨らみ、いわば粉飾のような形で、公益目的事業比率を高めるための手法だが、丸投げを公益法人同士がお互いにやり合って公益事業比率を高めるなどということを考えたとしても、そんなものは見抜かれることになるだろう。



  いろいろ考える団体もあるであろうが、とにかく研究開発や技術開発をする公益法人は、とにかく専門職員をたくさん置いて、できるだけ内部で研究をして、その過程や結果を大きく公表することが一番近道のようだ。

特に、委託先には気をつけるといいだろう。

公益総研株式会社 非営利法人総合研究所

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